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    朗読教室 受講生による第九回朗読会

作品テーマは「March」。それぞれの物語。言葉の行進曲。

出演者(50音順)
垣内浩子/金木美穂/カンナ/たなかかず/辻あきこ/
出島ひろ子/中岡ふじの/樋口みづほ/藤井ヒロミチ/山岡くみ子


日時:2011年3月27日(日)15:00スタート
入場料:無料
会 場:NIJO poco a poco HALL
     tel 075-231-2993 京都市中京区西ノ京職司町8-2
     (JR.地下鉄「二条駅」徒歩4分)
 

写真:藤田直子
 
  (講師 佐野真希子より終了後のコメント)
朗読:辻あきこ  作品: 『イニシャル入り殺人』 ローレンス・G・ブロックマン
毎度ありがたいと思う作品選びです!というのは、やはり翻訳モノは独特のリズムを持ちます。心打つ名作ともなれば、色々な訳も出ていますが、ミステリは如何に自然な日本語に訳すかに重点が置かれてないというか!?そのせいもあるでしょう、朗読作品に選ばれる方はまずいらっしゃらなくて(笑)

でも、辻さんは普段から海外ミステリが好きなこともあって、その難しいリズムを物ともせず、何の違和感もなく朗読されます!やはり、朗読会は色々な作品を聞くことが出来るのも魅力ですから、このような「聞き心地」のはっきりと違う作品はいいですね。
   
朗読:金木美穂  作品:『心と手』 O・ヘンリー
この作品、セリフのある登場人物5名(男4、女1)と読み手にはちょっと気合いのいる短編です。一人で朗読をする場合、明確に会話がキャッチボールされていれば、キャラなんかお構いなしに朗読したって意味は分かります。

しかし、そうでないときのセリフは気を使いますね〜。短い作品の場合そこまでセリフ、口調にしっかりキャラが出てないことも多いですからね。そんな登場人物に気を使いながら、口調のスピードや、抑揚で表現できるようにひたすら練習に取り組みました!
   
朗読:藤井ヒロミチ  作品:『不思議なボールペン』 阿刀田高
今回貴重な男性参加者となりました。そして、初めての参加。そしてそして、中学生の藤井くん! 表現の感覚がフレッシュでいいですっ。

いわゆる、オチのしっかりあるショートショートですが、「間」も物怖じせずドーンと取って演技していく辺りが大物です(笑) これから本当に楽しみです!
   
朗読:山岡くみ子  作品:『転生』 志賀直哉
表現などちょっと昔テイストです。そりゃそうか(笑)とてもユーモアのあるお話ですごく面白かったので、ざっくりと紹介を。夫婦(口喧しい癇癪持ちの夫と、能天気なちょっと間抜けな妻)が、二人で生まれ変わるなら何がいいか色々相談するんだけど、結局、夫婦仲の良いから「おしどり」にと決めます。その後、夫は死んでおしどりに転生したが、妻は何に生まれ変わるか忘れて、間違えて狐に転生する。狐になった妻は夫であるおしどりに会った時、夫だと分かってはいるんだけど、空腹に堪えかねておしどりを食べちゃった。。。

私の好きなシーンがありまして。妻が生まれ変わるときに「狐だったかな?おしどりだったかな?」と悩みます。妻は最初「おしどりだったような」と思うんですが、生前の夫の言葉を思い出します。「お前は大体どっちか選んだら、なぜか絶対間違えた方を選ぶ!!!」って。なので、いっつも間違えるから、自分の思う方と反対の狐に生まれ変わるのです。いや、なんだかすごく気持ちが分かる、というか私もこんな判断の仕方をしていそうです(笑)

さて、朗読に話は戻りまして、山岡さんはマイクを使わずに、そして本を見ずに「語り」の要素も多く取り入れ朗読されました。この作品にはとてもぴったりくる表現方法だったと思います。見せ方も色々ですから、楽しいですね。
   
朗読:カンナ  作品:『さくら地蔵』 重松清
今回一番季節を感じる作品で暖かい気持ちになりました!元々のこの作品は朗読すると40分くらいかかるのですが、発表会用にカンナさんが短くまとめての朗読です。およそ10分という持ち時間で作品を選ぶのは本当に難しいものです。是非この作品を朗読したい!紹介したい!と思っても、作品の長さが一番のハードルですからね。

その点、カンナさんはまず時間ありき、でばかりで作品は選びません!そしてまとめ方が本当に上手で、初めて聞くと短くしたことに気づかないくらいです。カンナさんの取り組み方を見ていつも「この作品を」という気持ちを私も大切にしたいなと思います。
   
朗読:中岡ふじの  作品:『枯葉の天使』 朱川湊人
朱川湊人さんの作品を全く読んだことがなかったので、今回楽しかったです。私も詳しくないので、ちょっとご紹介を。

朱川 湊人 (しゅかわ みなと)さんは1963年1月7日生まれで主にホラー小説を執筆されているそうです。はじめは2002年に「フクロウ男」という作品でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビューし、2005年に『花まんま』で直木賞受賞。

さてさて、ウィキペディアによると、「ホラーの中でも、昭和30年代から40年代の下町を舞台とした「ノスタルジックホラー」を得意とする。ホラーの味付けをした「人間物語」と言える面がある」だそうで、その意味では今回の作品はストライクな感じです!また他の作品も読んでみたいです。
   
朗読:垣内浩子  作品:『ストライク』 川上弘美
淡々とした描写の中に込められた男女の気持ちを朗読で表現するって難しいですね。抑揚、声の強さもとにかくやりすぎないように、ちょっとしたスピードの変化や「間」に重点を置いて、繊細に。。。

垣内さんはそれをしっかり理解してこの作品に取り組まれました。それにより、今までとは一味違った仕上がりに私も本当に驚き嬉しくなりました!
   
朗読:たなかかず  作品:『桃子』 江國香織
「のう、お客人、あなたも困った方だ。。。」と和尚さんの語りから始まり、ほぼ全編この語りで物語が進んでいきます。

そうなると、和尚さんのキャラクターがこの作品を決める訳ですね。一番時間がかかったのは最終的に、和尚さんの声色でしょうか(笑) 最初は、まさにお爺さんのような声から始めて、役を演じない自身の声までどれが一番しっくりくるのか長い道のりです。。。

でも、それによってすべてが変わってきますから力が入ります!最終的に、たなかさんが表現する『桃子』になったと思います!!
   
朗読:出島ひろ子  作品:『おぼしめし』 三浦哲郎
出島さんは前回大変好評だった青森弁での『てんのり』に引き続き三浦哲郎さんの作品で。今回も方言での朗読でしたが、やはり言葉の面白さをなんだか直に感じます。

文字で読んでいるわけではないので、逆に言葉の意味自体は方言によって分かりにくくなるのですが、出島さんの作品を表現する心がしっかり伝わって内容も分かるんですよね。素晴らしいです。